終身雇用は崩壊へ―― 新卒採用を制す就活生の「即戦力」対策とは?
新型コロナ感染症の広まりにより、日本の経済活動にも影響が出始めています。
倒産する企業や事業を中止する企業も増加し、新卒採用の終身雇用制度にも陰りが見え始めてきました。
そんな時代の変化を受けて、企業は学生に対して即戦力を求めるようになってきました。
今回は、即戦力とはなにか、即戦力を身につけるにはどうしたらいいのかなどについても触れていきます。
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終身雇用制度とは
終身雇用制度とは、定年まで正社員として雇用し続ける制度のことです。
同じ企業で入社から定年まで働き続ける雇用システムは、高度経済成長以降、日本型企業の典型でした。
人件費は企業経営の中でも大きなコストになりますが、終身雇用制度が当たり前だった高度経済成長の時代は、右肩上がりに景気がよくなる時代。
人件費が企業の負担になることなく、雇用を維持できた時代だと言えます。
そもそも、終身雇用制度は20世紀に入ってから生まれた制度です。
20世紀当初、腕のいい職人を競合に引き抜かれないように勤続年数に応じた昇給制度を導入。
雇用を維持できるように年功序列にポイントを置いた雇用制度が一般的になったそうです。
第二次世界大戦後は一時的に衰退した制度でしたが、高度経済成長によって、終身雇用制度は再び増加しました。
終身雇用制度は崩壊する
高度経済成長以降、バブル崩壊、リーマンショック、東日本大震災などの度重なる経済危機の影響もあり、終身雇用制度が崩壊し始めました。
成果主義を導入する企業も増えている昨今、より実力のあるものが昇進するというケースが一般的になりつつあります。キャリアアップのために転職することも珍しくなくなり、人材の動きもより流動的です。
とくに新型コロナ感染症が広まりを見せる昨今では、企業はより効率的に利益を生み出さねばならなくなり、さらに経済的な厳しさが増しています。
自粛などの行動制限が日常となり、経済活動が縮小化した企業も多いです。
なんとか売上を維持しようと、少数精鋭で事業を継続しようという動きもあります。
すると、より成長性のある人物が雇用され、実力のないものは解雇されるようになります。
人件費は事業経営の中でも多額の費用を必要とするため、企業は負担を減らすためにまずリストラをしようと考えるわけです。
終身雇用制度は、人材を長期に渡って雇用する制度です。
人件費がかかる終身雇用制度は世界的に見ても珍しい制度であり、コロナ危機にある状況から、新卒採用での終身雇用制度は今後も減る一方となるでしょう。
これからの新卒採用はスキル重視・即戦力重視の採用へ
現在、日本の企業でもスキル重視の採用が増えつつあります。
さらに新型コロナ感染症の影響もあり、即戦力として、少数精鋭部隊の一人として活躍することが求められるでしょう。
かつての日本型企業のような、メンバーシップ型の雇用からジョブ型雇用へも移行するでしょう。
メンバーシップ型雇用は人材に対して仕事をあてがう考え方ですが、ジョブ型雇用は仕事に対して人材をあてがいます。
メンバーシップ型雇用はプロジェクトが終わっても次のプロジェクトを請け負いますが、ジョブ型雇用の場合は、プロジェクトの終了とともに雇用が切られる可能性があります。
企業としては無駄な人件費を削減できるという利点がありますが、労働者としては、いつ無職になるかと不安を抱えることになります。
しかし、経済状況が悪化しているなか、企業は存続に必死です。コロナ禍においては致し方なく、この流れが将来に渡って一般的になる可能性もあります。
即戦力になるための具体策
これからは即戦力として働ける人材が特に重宝されます。スキル重視採用が主流となるのです。
そんななか、新卒採用に取り組む学生にはどんな対策が必要になるでしょうか。具体的に行える対策について見ていきましょう。
企業が求めるスキルを把握して経験を増やす
そもそも、企業側が求めているスキルとはどんなスキルでしょうか?
自分が企業側に求められる人材になるためにも、企業側の意図も把握することが大切です。
また、求められるスキルから逆算してインターンや部活動などをチョイスするのも効率的でしょう。
ここでは例として、あるソフトウェアメーカーが新卒生に求めているスキルについて紹介します。
◆課題解決のための柔軟な発想
既存の社員にはない発想力を、新卒の社員に求めるようです。
既存の社員では常識に囚われてしまうことが多いですが、課題解決のために何ができるか、新鮮な切り口を求めています。
ただ、問題解決力があることを示すのは簡単ではありません。
実際に研究などを通して経験した話をするのもいいですが、大会やコンテストに挑戦してみるのもいいかもしれません。
他にも、ヒッチハイクでの旅などを経験するのもインパクトがあっていいでしょう。
◆課題を発見する力
前述のように発想力を求めるニーズです。
すでに常識となってしまった、当然となってしまったものの見方を180°変えたいという企業の思いが垣間見えます。
課題を見つけられなければ、イノベーションは起こせません。変化の時代に変容すべき課題を見つけられる若い視点が求められています。
◆デジタルリテラシー
デジタルリテラシーとは、IT機器やツールを使いこなせる能力のことです。
即戦力を求める職場では、基礎的な研修はスキップしたいと考えているのでしょうか。
今や、パソコンやスマートフォンを通じて、様々なデジタルコミュニケーションを取ります。
オンライン会議などが増加した今、最低限の通信機器の知識は理解しておいてほしいと考える企業が多いのです。
長期インターンとしてスキルを磨く
スキル重視採用の波にうまく乗るには、長期インターンとして活動し、現場で使える力を身につけることが有効でしょう。
大学で研究をしたり勉強をしたりすることはとても重要です。
しかし、3ヶ月以上の長期間、実際に社会に出てみることで必要なスキルが身につき、自分に足りないスキルを見極めるのに役立ちます。
実務を経験することは、面接官を説得させる材料にもなるため、経験しておくと採用試験では有利です。
実績よりもプロセスに重きを置いた経験を
資格を取得したり、コンテストに応募したり、インターンで実務を経験したり……。
どれも即戦力として役に立ちそうですが、一番重きを置きたいのはそのプロセスです。
長期インターンは就活に有利ですが、その中身が空虚なものでは、即戦力になるとは判断されません。
企業がチェックしているのはむしろプロセスの部分。
どんな困難をどう乗り越えたのか、どんな課題を見つけられたのか、仲間とはどんなコミュニケーションで課題に向き合ったのかの方を重要視しています。
コンテストでの受賞歴は履歴書に華々しさを添えますが、企業はそんな履歴についてもプロセスを知りたがります。
コンテストを受けようと思った経緯や、難しかった課題をどう乗り越えたのかなど、そのプロセスをアピールすることで、自分が即戦力であることを訴えてみましょう。
逆にこれからアピールできる経験を増やす場合は、プロセスに重きを置くことができるインターン、部活動などの活動にチャレンジしてみてください。
【まとめ】終身雇用制度は崩壊へ、これからはスキル重視採用が一般化
終身雇用制度が崩壊することで、ますまず人材は流動的になります。
より良い人材をもとめて企業も採用活動をするため、それが新卒採用であっても、スキル重視の採用になることは避けられません。
まずは企業においての即戦力がなんなのかを把握し、長期インターンなどの即戦力の裏付けとなるような経験を増やしていきましょう。
また、重視するのは結果よりもプロセスです。
華々しい成果は履歴書を賑わせますが、それだけでは採用には至りません。
どんな結果を出すかよりもどんなプロセスを経験するかを重視し、行動に移していきましょう。